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広島地方裁判所 昭和23年(行モ)1号 決定

申立人

湊義男

外十名

被申立人

府中町選挙管理委員会

主文

本件の申立は之を却下する。

理由

申立人十一名代理人は「申立人等から、相手方に対する相手方がなした議員解職請求に基く、投票期日の決定及び公表取消請求事件の本案訴訟が完結するまで相手方が、地方自治法第八十條第一項の規定による同條第三項の投票に付することを停止する」との裁判を求め、その理由とするところは「廣島縣安藝郡府中町の町会議員は定員二十六名の内十四名が辞職し、現在申立人等十一名及び岩本顯登が町会議員である。然るに、申立人等が現職に止まることを快しとしない一派の者は同志をかたらつて、地方自治法第八十條第一項により、右府中町における選挙権者総数の三分の一以上の署名捺印ありとして、申立人等の解職請求書を相手方、委員会に提出したところ、同委員会は右解職請求書を受理し、その請求に基いて之を投票に付することとし、その投票期日を、昭和二十三年八月二十九日と告示した。然し右解職請求書の署名捺印中には(イ)本人の不知、又は不在の場合に同居者、又は第三者が記名捺印したもの、及び(ロ)甘言により、眞意に反して、署名捺印したもの等、眞実の署名捺印でない多数が含まれており、之を除外するときは、右八十條所定の三分の一の定足数を欠くことになる。而して同條の連署をば自署を意味するから、結局右の解職の請求は違法であり、從つて又之を適法のものとして、受理してなした相手方委員会の投票期日の決定及び公表の処分も違法である。そこでその取消を求めるための本案の訴訟を廣島地方裁判所に提起したが、右訴訟の完結迄に右処分が執行されると、申立人等は償うことのできない損害を被るので、右処分の執行の停止を求めるため本件の申立に及んだ」と謂うにある申立人等の主張するような理由であれば、右投票が執行されたとしても、その結果申立人等の危惧するような結果を必ず招來するとは考えられないから、行政事件訴訟特例法第十一條第二項所定の相手方行政廳のなした処分の執行に因つて、償うことのできない損害を生ずる場合に該らないものといわねばならぬ。そこで申立人等の本件申立は之を却下するを相当と認め主文の通り決定する。

(三宅 宮田 浅賀)

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